鮎が泳ぐ川は

アユ 面影橋から

(上)アユです。イワナやヤマメほどではないですが、清流をイメージする魚でしょう。これは神田川産ではありませんが…写真提供:松下優 氏(下)面影橋から川面を見下ろして思ったこと。第一発見者の方は、本当によくアユと見分けられたな、と。
なお、このページの原稿はリベルタ出版「よみがえれ、ふるさとの川と魚たち」著・加藤憲司氏の該当ページをもとに書いております

 1992年9月のことでした。東京都水産試験場に一本の電話が入ります。「神田川にアユらしき魚がいる」と。連絡を受けた試験場では疑問の念を持ちながら、連絡を受けた面影橋へと向かいます。そこで、アユの食料となる藻が繁殖しているのを確認。日を改めて、実態調査として投網を投げます。そこで、体長 22cmの成魚がかかりました
 しかし、この時点ではまだ神田川に天然のアユが生息しているとは断定できません。誰かが気まぐれに放流したという疑問は残ります。もし、自然に繁殖したアユならば、繁殖活動が行われるわけですから、翌年の春同様の場所で稚魚がとれるはずです。稚魚が確認できれば、神田川で天然アユの生息が認められるわけです
 そこで、翌年の4月、面影橋付近で再び調査が行われました。この調査には報道陣も面影橋に大集合、結構な騒ぎとなりました。結果は、ご記憶の方も多いと思います。稚魚6尾の生息を確認。東京ローカルではまさにビッグニュースの扱いでした
 東京水産試験場の見解は、東京湾から隅田川経由でアユが遡上しているとのことですが、下流部分の淀んだ部分を通過しているのは奇跡に近いという意見もあります。一方で、面影橋付近では食料となる藻の繁殖状況などはアユの生息に適した条件が整っているということ。1993年の調査では、かなりの数の稚魚がいるのではないかということでした
 その後、アユの話題はめっきりと聞こえなくなります。一過性のものだったのか、もう神田川にアユはいないのかとお思いになった方も多かろうと思います。それは違います。東京都や新宿区の考えで、あまり騒がず神田川のアユを大切にしようという考えがありました。騒ぐのは止めようということです。釣り上げてやろうという輩がでないようにという配慮もあります。新宿区が行っている、神田川生き物実態調査報告書を見ると、アユの生息は2005年まで毎年確認されています

 アユは、神田川に生息する魚です
 神田川は、天然アユが泳ぐ川なのです

生物化学的酸素要求量について
BOD 生息できる代表的な魚 階級区分
1 イワナ AA水道用水1級
2 イワナ ヤマメ A水道用水2級
3 アユ サケ B水道用水3級
5 コイ フナ c工業用水1級
8 生息できず D工業用水2級
10 生息できず E工業用水3級

河川の汚濁状況を示す数値として使われるが、生物化学的酸素要求量=BODです。 左表のBODの欄は1リットル中のBODをmg単位で示すものです。神田川の面影橋付近は、2.4〜8前後で推移しており、 アユの生息にはギリギリの条件と言われています。数字が推移するのは、上流に位置する下水処理場が、 処理能力を上回る大雨で下水を処理できず放水してしまう場合があるからです。 ちなみに河川に下水処理水を戻す場合、有機物を分解することが義務づけられています。これでBODは下がりますが、窒素とリン (水中生物の窒息死のもとになる)は取り除かれませんでした。この窒素とリンの排出量も減らす高度処理という方法が、 落合水再生センターなどで行われるようになりました。この他SS=水中浮遊物質の削減数値も下水処理では数値目標が定められています