STORY&REPORT

Monfrotto 303SPHのセッティング

303SPHは日本国内で店頭で購入できる数少ないQTVR用の雲台です。 ここでは実際に使える状態にするまでをレポートします。 といっても、もうすでに様々なサイトで紹介されている製品ですから、数々のレポートの再確認といったところでしょう。


 さて、303SPHが入っていた箱は、ご覧の通りの何のデザインも施されていない箱。ようするに専用の箱ではありません。ペタンとステッカーというかタグが張り付いているだけ。長さが35cmもある、デッカイ箱です。箱のでかさでビビリましたが、中は結構スカスカ。下の右の写真が内容物です。すでに組み上がった状態で入っていました。交換用のスライディングプレートが2枚付属。専用マニュアルと、マンフロット製品全般に付属する取り扱いアニュアルが付きます。専用マニュアルは、英語、イタリア語、ドイツ語、フランス語、スペイン語のそれぞれのページがあります。英語をGB(グレートブリテンですね)と表記している点が、ヨーロッパらしいと思いました。

箱
でかい箱です。専用の箱ではありません。どうでもいいことかも知れませんが、エールフランスで来たようです。
キット内容
これが内容物。すでに組み上がった本体、交換用のスライディングプレート2枚とマニュアル。もちろん、マルボロは付属していません

 本体が組み上がっていますから、セッティングはそんなに難しくはありません。勘のいい人ならば、マニュアルを見ずにセッティングすることも可能でしょう。一応、マニュアルを見ながら組みましたが、書いてある文章を全部追わなくても何とかなっちゃいます。 まずは、垂直アームに付いているカメラ取り付け用のユニット(水平アームになります)を外してしまいます。カメラ取り付け用ユニットのアッセンブリーは、下の写真のような構造です。長いスライディングプレートに、カメラのセンター出し用のブラケットが付いています。そのセンター出し用のブラケットのスライディングプレートを外します。ここにカメラが付くわけですが、カメラねじはブラケットに付いているものを使います。
 ただ、撮影現場ではこのネジでカメラの脱着をするとなると、絶対に工具が必要になるため、クイックシューを用意しました。303SPHを使っている写真を見ていると、誰もがクイックシューを使っているようでしたが、こういう理由だったんですね。用意したシューは、ベルボンのQRA-635L。国産シューの中ではズレやガタが出ないと評判ですし、3/8のいわゆるデカネジで装着できるというのが、選択のポイントでした。これで、カメラを装着する準備が整ったわけです。

カメラ取り付け部アッセンブリー
垂直アームに付くカメラ取り付け用のユニットのアッセンブリー。長いスライドプレートに付くブラケットはカメラのセンター出し用。
センター出し用プレート
センター出し用のブラケットから、センター出し用のスライディングプレートを外します。このプレートにカメラが付きます。
センター出し用ブラケット
ブラケットには、大小ふたつのカメラ取り付けネジがあります。これを外して、スライディングプレートにカメラを装着するわけです。
クイックシュー装着
でも、直接カメラを取り付けるとなると、脱着のたびに工具が必要になるので、クイックシューを付けちゃいました。

 この先は、本体を三脚に固定した方が、作業しやすいでしょう。ちなみに、QTVR撮影では滅多に使わないハスキー3段にのっけて行いました。まずは、垂直アームを起こしておきます。そして、カメラ取り付け部をアッセンブリーで、本体の垂直アームに戻します。下左の写真が、カメラを取り付けた状態です。右の写真でどのようにカメラが付いているかわかるはずです。右の写真にふったナンバーは、それぞれ次のようになります。1.水平アーム回転ロックノブ、2.水平アーム指示ブラケット、3.水平アームスライドロックノブ、4.水平アーム、5.カメラセンター出しプレート支持ブラケット、6.カメラセンター出しプレート。この段階で、すでにカメラの左右方向のセンター出しは済んでいるわけですから、次は上下方向のセンター出しを行います

カメラ取り付けアッセンブリー取り付け
カメラ取り付け部アッセンブリーを本体に戻します。ここから先は三脚に固定して作業した方がいいでしょう。
カメラ取り付け部
カメラ取り付け各部の構造がわかるように、レンズ装着前に撮影しました。このカットを見れば、あることに気がつくはずです。

 垂直アームのノブを緩めて、カメラを真下に向けます。ちなみに、最初にここを動かした時、不良品じゃないかと思うほど固くてビックリしました。そして、本体下部のノブを緩めれば、ベースアームがスライド可能な状態になります。これで、カメラの上下方向のセンター出しを行います。別に真下を向けなくても、この調整は可能ですが、本体のセンター・マーキングとの位置関係が近くなるので、真下を向けた方が作業しやすいと思いました。これで、カメラのセンター出しが終わったら、上部アームを水平に戻して、スライディングプレート上を前後させて、ノーダルポイントに合わせます。

カメラ水平だし
下部のスライディングプレートのブラケットには、センターマーキングがあります。カメラを真下に向けて、カメラの上下方向のセンター出しを行います。
ノーダルポイント設定
カメラのセンター出しが終わったら、あとはノーダルポイントを合わせるわけです。スライディングプレート上を前後させて、ポイントへと移動させてやればOKです

 上の右の状態でノーダルポイントをセットしたら、実はセッティングはおしまいです。さて、シグマの円周魚眼レンズのような画角の広いレンズを使う場合、雲台のアームもセッティング次第では写り込んでしまいます。そのため、ベース部分のスライディングプレートを付属の短いものに交換して使っている人が多いようです。下左の写真のドライバーをあてている部分にあるネジを外せば、垂直アームが外れる構造になっています。しかし、僕が購入したセットは、どえらく固く締まっていてネジが緩みません。機会を見て万力がある場所を借りて、インパクトドライバーでぶっ叩いてみようと思っていますが、まだ実行していません。

バーチカルアーム この部分のネジを緩めれば、下部のスライディングプレートを交換できるのですが、まだやっていません。
300N
300Nとして単品発売もしている回転ベース。4〜72ストップまで10段階で回転角度を調整できます。回転角度を決めるそれぞれの穴に、ネジを入れることによって角度が決められます

 さて、先にキャプションで「あることに気がつく…」と書きました。何かと言えば、センター出しのブラケットを外してしまっても問題ないんじゃないか、ということです。つまり、水平アームになるスライディングプレートに直接カメラを装着できる構造になっています。事実、そうしても問題はないわけです。基本的には、一眼レフカメラの場合は、三脚ねじ穴とレンズのセンターは同軸上に並ぶ構造ですから。てなわけで、多くの人がやっているように僕もセンター出しブラケットを外して、水平アームになるスライディングプレートに直接カメラを付けることにしました。ただ、短い方のスライディングアームでは、僕が使いたいレンズではノーダルポイントが取れないので、長いスライディングプレートを使います。

コルクを貼った
センター出しブラケットを外した長いスライディングアームは、ノンスリップ加工がないので、コルクシートを貼っておきました。
現状のセッティング 現時点での僕のセッティングです。装着しているレンズは、シグマの10-20mm。このセッティングで、問題はまだ見つかっていません。

 以上で303SPHを使う準備は終わりました。こんなページをわざわざ作ったのに、まだ実戦投入はしていません。テスト撮影をした段階では、安心感信頼感が高いというのが、ファーストインプレッションです。ただ、初期アタリだと思いますが、いかなる可動部分も固くてスムースさに欠けるという点が気になります。使っていけば、恐らくは解決されることだと思っています。でも、重いんですよね。この雲台。
 センター出しのブラケットを外してしまったわけですが、ちょっと気になることもあります。シグマの8mmなら問題なしですが、鏡胴の太いレンズとKissXとの組み合わせでは、スライディングプレートとレンズフードが干渉してしまいます。これは、かさ上げ用のプレートを挟むことで対処しようと思っています。
 不満点は、各可動部の締め付けノブを回すと、締め付けトルクによってかなり動いてしまうこと。ミリ単位の調整ができる精度を持って作られているのにも関わらず、この締め付けトルクによるズレには悩まされます。片方の手でしっかり可動部を保持して、締め付ける。これを忘れないようにして操作することにしましょう。