隅田川から江戸川橋まで
●昌平橋と万世橋
和泉橋の次の橋が神田ふれあい橋。施設専用橋の後楽園ブリッジを除けば、下流部唯一の歩行者専用橋です。この橋は、東北新幹線の工事のために架けられた橋ですが、工事終了後住民対策で一般に開放されました。知らない人はここに橋があることに気づかずに通り過ぎるような、裏路地めいた橋の取り付きがいい雰囲気です。この橋の右岸すぐ下には、柳森神社という小さいながらも立派な社があります。実はこの境内、灰皿がいくつも設置されて平日は、付近のサラリーマンで大賑わい。特に、昼休みの時間帯なんか、それはそれは混雑しています。そのような光景を見ると、神社はパブリックスペースであることを実感します。
神田ふれあい橋のすぐ先で、JR山手線、京浜東北線の鉄橋をくぐります。秋葉原電気街の一角となります。万世橋に着きます。下流側には時代を感じる船着き場跡が残ります。川へと下る階段もあるのですが、今は立ち入ることができません。この橋の上は、国道17号線が走ります。でも、17号線というよりは中央通りといった方がとおりがいいでしょう。この万世橋と次の昌平橋との間の右岸は、煉瓦造りの護岸になっています。この煉瓦は、旧国鉄万世橋駅の遺構。万世橋駅の跡地は、交通博物館になっていましたが、その博物館も今はありません。
万世橋と次に架かる昌平橋は、江戸期から明治そして昭和と橋の位置や架け替えの複雑な歴史を持ちます。ふたつの橋の位置関係が逆転していた時代もあります。また、明治期に初架橋された時、萬世橋(よろずよばし)と呼称していた時期もあるようですが、これは時代と共に「まんせいばし」と人々が呼ぶようになったため、橋名も万世橋となったという歴史があります。
昌平橋ですが、このサイトのトップページにもこの橋上からの写真を使っています。橋の上にはJR総武線の神田川橋梁。右岸はピッタリと寄り添う中央線。上流側に異彩を放つ聖橋。その手前には、地下鉄丸ノ内線の鉄橋。この光景は、非常に多くのメディアで紹介されてきたものです。地形的には、江戸期に仙台藩が開削した通称仙台堀の渓谷の出口にあたり、右岸側には本郷台地が迫っています。そのため、東京都心部ながら独特の景観を作っていると言っていいでしょう。
●聖橋から水道橋
昌平橋から左岸川沿いに外堀通りが走ります。大通りですが散歩する人も多く、川沿いに歩道があります。道は神田川を見下ろすように坂道を上っていきます。左手にJR御茶ノ水駅、眼下に丸ノ内線の鉄橋を見る先で、聖橋をくぐります。聖橋は神田川、JR中央線、外堀通りをまたぐ橋です。神田川部分がコンクリートアーチになっていて夜間はライトアップも行われます。ニコライ堂と湯島聖堂、ふたつの聖堂を結ぶことからの命名です。外堀通りの神田川とは反対側に位置する湯島聖堂。緑濃い敷地に寄り道するのもいいかも知れません。
外堀通りのちょうど頂点にあたる箇所に、お茶の水橋が架かります。ここから、水道橋に向けて坂は下りになります。江戸時代に渓谷と称された渓を見下ろしながら、歩くことができるコースです。さすがに通行量の多い外堀通り、静かな散歩は望めませんが、川の姿を常に目にしながら気分良く歩けるはずです。
坂を下りきった所が白山通りで、水道橋が架かります。その下りきる少し手前に、神田上水懸樋跡の碑が作られています。外堀通りの歩道から一段下がった場所に碑が作られていますが、そこまで下がると思いのほか川の景観がしっかり望めます。この碑のすぐ近くには、神田川お茶の水分水路の碑があります。もう水道橋の交差点はすぐそこですが、交差点寄りの水道橋橋詰めに親水公園が整備されています。実は、この公園は河川局が整備したもので、行政上は公園とは言わないそうですが、それはいいとしましょう。お茶の水分水路の工事の時、この公園のあたりで神田上水の遺構が発掘されました。その遺構は、近くの東京都水道歴史館へ移築され保存されています。(次ページへ)